谷川俊太郎 『わたしとあなた』
笑う
これは
あたしの
と言って
あなたは取った
あたしも
これはあたしの
と言って
一つ取ったけど
それが
ほんとに
あたしのなのか
あやふやで
あなたのであっても
かまわない
気がした
あなたのと
あたしのを
並べると
二つは
そっくりで
どっちがあなたので
どっちがあたしのか
分からない
あなたが
笑い出したので
あたしも
笑った
「笑う」 谷川俊太郎