三角みづ紀 『よいひかり』
カーテン
自分で自分を幽閉するひとたち
緑色のカーテンを開けたら
日曜日の朝が 湿っている
テレビ塔のてっぺんが
霧につつまれて
見えなくて
軽快に移動する鳩
とおく揺れてる市庁舎の旗
赤いレンガ屋根の家々には
窓、そしてカーテン
このカーテンを閉めれば
風景と自分が切断されて
ますます眠りが深くなる
いつだって
考えを手放せるし
いつだって
物思いにふけることができる
カーテンを開けたり
閉めたり
決めるのはわたしたち
「カーテン」 三角みづ紀