三角みづ紀 『よいひかり』
カレンダー
天井の高いこの部屋には
時計とカレンダーがない
時間を気にしないひとが
眠るための 部屋だから
なくてもかまわないのだろう
白い紙とペンを手に
夜中にカレンダーを作る
時計はスーツケースに
しのばせてきた
季節のうつろいは
景色を見ていたら
知ることができる
日々が進む速度は
いつだって変わってしまうから
なかなか知ることができない
時間に追われて
生きることは厄介
でも
時間を追いかけて
生きることは困難
手作りのカレンダーは
とてもいびつで
あまり予定もないのだけれど
明日を どう大切に過ごすか。
ながめては
考えている
「カレンダー」 三角みづ紀