性的少年 16 |
次の日、僕の生活にちょっとした変化が生まれた。まず、あまりいじめられなかったのだ。かといって、みんなと仲が良いかといえばそうでもない。どうやら永嶋くんが裏で手をまわしているらしい。僕をいじめないように言ってくれたようだ。いじめが少ない日もあるんだけど、それとは違って、みんな、「いじめたいのにいじめられない」といった感じ。いつもと違うみんなの対応と雰囲気に、逆に戸惑っちゃった。
放課後、永嶋くんに呼び出された。永嶋くんが泣いていた僕んちの近くの公園。なんだろう? 僕は「永嶋くんに協力できた」という実感があったけど、またいつどこで元の関係に戻るかわからないという不安もあった。まだまだ僕と永嶋くんは「いじめられっ子といじめっ子」という間柄に変わりない。
ドキドキしていると永嶋くんがやってきた。ふたりでベンチに腰掛ける。なにもしゃべらない僕ら。僕も緊張していたし、永嶋くんも緊張しているのがわかった。風が木を揺らして音を立てるけど、話の場つなぎになるほどの珍しさもなければ、間を埋めてくれるわけでもない。なんとなく、永嶋くんのお父さんとお母さんに関係することなんだろうなあとは想像ついた。
永嶋くんの話は予想通りだった。
「あのさ、教えてくれ。俺に保健体育を教えてくれ!」
あまりの必死な表情に僕は「うん、いいよ」としか言えなかった。永嶋くんは生命の尊さを子供である自分の口から、両親に伝えたいんだという。お父さんとお母さんは、ふたりがどんなことをして永嶋くんを作り、どんな思いで永嶋くんを産み、育ててきたか忘れちゃっているだけなんだという。僕もきっとそうだな、って思う。
僕は急いで家に戻り、お兄ちゃんの部屋から教科書と参考書を探し出し、また公園へと向かった。そして、永嶋くんに全力で教えていった。保健体育の教科書をふたりで読んだり、裸の女の人がたくさん出ている本に掲載されている写真を見ながら、子供の作り方のバリエーションを学んだり。由香先生と昇せんぱいの物語も学んだ。勉強する範囲が多くて一日じゃ足らず、連日、公園に集合して勉強しあった。結局3日間勉強した。
家に帰ると参考書をお兄ちゃんの机の上に置いておくのだけど、必要な時にいつもなくて、しまう場所が毎回違っているので見つけるのに大変だった。でも、僕が一生懸命だったからか、すぐに見つけられた。この3日間、永島くんと勉強しては机の上に置いた。眠りにつく前、復習しようと思ってお兄ちゃんがお風呂に入っている隙に見つけ出し、おさらいをしては机の上においた。
永嶋くんも必死で僕に食らいついてきてくれた。僕、時には永嶋くんを叱り飛ばしもした。だって永嶋くん、物覚えが悪いんだ。「蜜壺」をしょっちゅう書き間違えるんだ。頭の良さでは僕のほうが上だし仕方なかったんだけど、僕は心を鬼にしてスパルタ教育をした。今でも永嶋くんを引っぱたいた時を思い出すと心臓がバックンバックンになる。
僕らには時間がなかった。1秒を争っていた。永嶋くんのお父さんとお母さんが離婚するのは時間の問題に思われていたから。少しでも早くひと通りの勉強を済まさなければならなかった。
日に日にお兄ちゃんの元気がなくなっていき、落ち着きのなさもひどくなっていったけど、心配する余裕は僕になかった。




















