ヒコウボーイ 8 |
帰ってきたのはひろしの父である。この状況を見られることが一番やっかいな人物かもしれない。でもそこはひろし、一度岡崎で経験を積んでるので流暢に招き入れた。至極自然な「お帰り」に父もつられた。
「・・・おお、ただいま」
「早かったじゃん」
「ああ。今日は土曜で仕事休みだから、パチンコに行っててな」
「へえ」
「で、ひろし。これなんだ?」
母を指さしながら訊ねた。いよいよ本題に突入された。父のタイミングで切り出されると、さすがに瞬時に適切な回答ができず、言葉に窮した。
「どうなんだ、ひろし。人が死んでるように見えるが」
「ああ、これ? うん、うーん、亡くなってる、かな」
「ほう。なぜ飛び散っているんだ?」
あれこれごまかそうとするのも面倒くさくなり、正直に答えることにしたひろしは胸を張って答えた。
「俺がやっちゃった」
北斗神拳の伝承者としての誇りと責任感がひろしに胸を張らせた。
「何い? お前が殺したのか! これ母さんだろ? 何をどうしたらこんな姿になるんだっ!」
「秘孔をついたらこうなったんだよ」
「ヒコウ? 何だそれは!」
岡崎と違い、父には詳しい説明が必要のようだ。しかもかなり興奮しており、理解を得るのに結構骨を折りそうである。
「だから『北斗の拳』ていう漫画があって、その主人公がケンシロウっていう奴で、北斗神拳ていう、ああもう面倒くせえっ」
ひろしは機嫌を損ね、ダイニングを出ようとした。
「待てっ、まだ話は終わっていない!」
「うるせえなっ、まだなんか文句あんのかよ」
「ないとでも思ってんのかっ。お前の言ってることはさっぱりわからん!」
「だからその漫画見ながら見よう見まねで母さんに北斗神拳の秘孔を使ったら決まっちゃったんだよ! で、自首するの嫌だからその北斗神拳で警察相手に戦って、ああもう面倒くせえっ」
岡崎とのやり取りの繰り返しで嫌気がさしてきた。どいつもこいつもいちいち驚いたり疑問持ったり。何も悪いことはしていない、と言わんばかりのひろしを父は目一杯引っぱたいた。
「とにかく何てことをしたんだ!」















